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対流圏界面 (tropopause) メモ (hysk)

対流圏界面に関するメモ

対流圏界面の定義,知ってるようで知らないことも. 気象庁のゾンデ観測データ(高層気象観測年報CD & 気象観測月報CD)の解析時, データの解説文書にあった.
最初に知ったのは,NCEP再解析での tropopause の決め方の部分が気になって調べた時(1998年頃?). 定義の詳細な部分を覚えきれないので,良い機会だからメモ(2015-11-03).

ゾンデ観測値による対流圏界面の決定手順

まずは解説文章をそのまま抜粋(気象観測月報CD(2014年3月), "(CD_root)/documents/format/f_sonde_j.htm" より):

500hPa面以上の高さで、ある面とそれより上2km以内の面間の平均気温減率がすべて2.0℃/kmをこえない面を「第1圏界面」とする。
「第1圏界面」の上のある面とその面より上1km以内の面との間の平均気温減率がすべて3.0℃/kmをこえる層がある場合、
この層またはそれより高い層で「第1圏界面」と同様の基準により求められた面を「第2圏界面」とする。
このような面が「第2圏界面」より高いところにいくつかある場合は、高度の低い方から「第3圏界面」、「第4圏界面」、・・・とする。

METEOTERM (WMO)での定義は下記(英語; checked 2015-11-04):

The boundary between the troposphere and the stratosphere, where an abrupt change in lapse rate usually occurs. 
It is defined as the lowest level at which the lapse rate decreases to 2˚C km-1 or less, 
provided that the average lapse rate between this level and all higher levels within 2 km does not exceed 2˚C km-1. 
Occasionally, a second tropopause may be found if the lapse rate above the first tropopause exceeds 3˚C km-1. 

「500hPa面以上で」という高度の制約に関する記述が見られないが,言ってることは同じ.

日本で観測された対流圏界面

実際の鉛直プロファイルを掲載予定. 解析しているうちに,「これは」と思うものが見つかるだろう.
under const.

対流圏界面に関する統計量

単なる統計量を見せるだけでは,論文にならないなぁ... それを学術的に面白く・意義のある結果として見せる工夫するのが, 研究者としてのセンスなんだろうが. 今はまだ思いつかないので,あと10年以内に何か出せるよう,考えておこう(2015-11-03).
でも,こういうものこそ,教科書末尾の参考資料みたいな部分に掲載してほしいものだ.
under const.

参考文献・web

観測データを基に対流圏界面や気温湿度特異点(逆転層など)について調べていくと,どうしても高層気象観測の情報に行き着く. なんだかんだで,ゾンデ観測の歴史的背景を調査することになってる. 革新的な論文を書ける材料に直結するわけではないが,調べていくとこれはこれで面白い.

web情報

NCEP再解析のドキュメント.
初めて調べたのがこれ.web情報だったかどうかすら,記憶が定かでない. テキストファイル(英語)は持っているのだが,どこから入手したのか記憶が曖昧. おそらく,NCEP再解析のCD-ROMに同梱されていたファイルだと思うのだが. 著作権に関する情報を確認できないので,残念ながら勝手に掲載するわけにもいかない. 悪しからず.
trop_wmo (Documentation > Functions > Interpolation); NCL web
NCAR Command Languate (NCL) で定義されている,対流圏界面計算用の組み込み関数. WMO の定義に従う. See WMO (1992): International meteorological vocabulary, Genf, 784pp (原典を発見できず)
大気の構造と流れ(気象庁web)
大気の鉛直プロファイル(成層状態)に関する一般向けの解説.厳密な定義が書いてあるわけではない.

和書

高層気象観測指針
気象月報CDの解説文書内に記載. 対流圏界面だけでなく,気温湿度特異点や極大風速面についても定義されているようだ.
しかし,自分自身では現物を確認した事がない. 原点かつ原典なのだから要調査.
高層気象観測の発展と現状 (気象研究ノート第229号, 2014, (編)水野,上窪,定村)
気象研究ノート.電子化されていない(2015-11-03時点)ので,購入者から見せてもらうしかない. 高層気象観測で使用される機材に関する情報が,各分野の専門家により7章に分けて記述. 気象研究ノート第194号以後の高層気象観測の変遷などについても言及.
二宮先生からのツッコミが入った. See also 二宮 (2014, 天気), 「高層気象観測の発展と現状」」(気象研究ノート第229号,2014年)についてのコメント
この指摘事項を踏まえた文献が, 水野ほか (2015, 天気), 「高層気象観測の発展と現状」についてのコメントに対する回答および 阿部 (2015, 天気)である. これらは気象研究ノート229号と併せて読むべき.
気象測器-高層気象観測篇 (気象研究ノート第194号, 1999, (編)田中,小林,水野)
気象研究ノート.電子化されていない(2015-11-03時点)ので,購入者から見せてもらうしかない. 高層気象観測で使用される機材に関する情報が,各分野の専門家により6章に分けて記述.
(1章)業務用ゾンデ,(2章)研究用ゾンデ,(3章)光学式能動型測器(ライダー),(4章)受動型測器, (5章)音波を使った能動型測器,(6章)測器一覧

洋書

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学術論文・解説

対流圏界面のネタに関係しそうな論文.時系列逆順(古いモノが下に,新しいモノが上に).

  1. 阿部 (2015, 天気 p.161-)
    • Title = 気象庁における高層気象観測の変遷と観測値の特性 第1部 高層気象観測の変遷(天気2015年3月号)
    • 気象庁のゾンデ観測の歴史.測器の特徴,更新時期など.
    • 内容は地味に見えるかもしれないが,極めて重要な資料.観測に関する基本的なメタ情報は,観測値の品質やその時間的連続性などを考慮する上で必要不可欠. こういう情報が気象庁の内部に限定されず,誰もが入手できる文献情報(しかもPDFファイルという電子媒体)として記録・出版されたことに心から感謝したい.
  2. 藤原 (2011, 天気 p.679-)
    • Title = 気候監視のための新しい高層気象観測ネットワーク GRUAN(天気2011年8月号)
    • 気候変動監視のための高層気象観測網 GCOS Reference Upper Air Network (GRUAN; GCOS基準高層観測網) に関する解説.
    • 専門外なので,細かいところはわからない.しかし,「5. さいごに」に記述されていた,"reference" という用語に関する箇所が面白い.というか勉強になる. 異分野からの参加者による会議では,まずは参加者の「言葉の定義」を確認することが大事. ここに齟齬があると,お互いの主張を正確に理解できないため,会議で妥結点を見つけることが極めて困難になる.
  3. Reichler et al. (2003, GRL)
    • title = Determining the tropopause height from gridded data
    • グリッドデータ(例: 客観解析データ)で対流圏界面を決定する手法についての論文.被引用数: 60本(checked 2015-11-04)
    • 鉛直気温減率で定義.探索範囲は 550 - 75 hPa の大気層.WRF で導出されてる tropopause の計算手法でもある.

更新履歴

Date Changes
2015-11-03 気候気象関連以下に対流圏界面メモ (hysk) を追加,リンク作成.

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