SO2高濃度イベント情報
大気汚染関連研究のうち,SO2 (ないしSOx) 高濃度イベント (1日〜数日程度の高濃度)に関する個人的メモ.
非火山起源 SO2 広域高濃度
近年の日本国内では,局所的かつ短時間の高濃度を観測することはあっても, 広域で高濃度を観測することは稀である.
広域でSO2濃度が上昇する場合,その一部は 国外起源SO2の長距離輸送由来と思われる. ただし,越境汚染と思われる場合でもSO2濃度が国内の大気環境基準値 (1日平均値: 0.04 ppm 以下かつ1時間値: 0.1 ppm以下; See also 大気汚染関連情報 # 大気環境基準) を超過することは(私が知る限り)ほとんどないと思われる.
気体の SO2 は水にとけやすく,かつ大気中で酸化されて粒子化しやすい. 日本は周囲を海洋に囲まれているため,国外起源汚染物質が 海洋上の低い高度を輸送された場合,比較的湿度の高い 地域を通過することになる. また,越境汚染が顕著な際には,オゾン高濃度を伴う場合もある. オゾンは強力な酸化作用を持つため, 高濃度の O3 と混合した気体のSO2 はすみやかに粒子化する可能性がある.
以上のような理由から, 日本国内の SO2 濃度が 越境汚染により大気環境基準を超過することが生じにくいと考えられる.
しかし,気体のSO2としては顕著な濃度上昇がしにくくとも, 西日本では煙霧(haze)時にエアロソル(SPM, PM2.5)が高濃度を観測する場合がある. これについては,SPM高濃度エピソードを参照.
SO2ガスの濃度上昇は,火山噴火の直接影響が大きくない限り広域に影響を及ぼすことは少ないが, 硫黄酸化物(SOx)の総量増加イベントは,越境輸送の影響により,近年でもしばしば生じている.
東アジア域の黄砂・大気汚染物質分布予測(CFORS) を見るとよくわかります.
火山起源 SO2 高濃度
日本全体
- 火山ガスの放出量,組成などに関する一般的情報: See 篠原 (2015, 大気環境学会誌, Vol. 50, No.5, A59-).
- SO2放出量の多い火山(1975-2006年): 三宅島(2119 t/d), 桜島(1641 t/d), 諏訪之瀬島(579 t/d), 薩摩硫黄島(574 t/d), 阿蘇山(410 t/d), 浅間山(360 t/d), など. 上記の篠原 (2015), Fig. 4 より読み取り. 統計期間と噴火活動の活発・不活発期との対応状況により,数値・順位は変化するので要注意.
個別の火山
阿蘇山
最高標高: 1592 m (高岳), Google Map へのリンク, 阿蘇山(気象庁web)
- 2015年
- 2015-09-14: 中岳第一火口にて噴火.噴煙が火口縁上約2000メートルまで到達.噴火警戒レベル2(入山規制)に引き上げ(check: 2015-09-30)
- 2015-09-22: 熊本県を中心にSO2高濃度.阿蘇山の影響か否か,未確認
口永良部島
最高標高: 657 m, Google Map へのリンク, 口永良部島(気象庁web)
- 2015年
- 2015-05-29: 爆発的噴火.噴煙が約9000メートルまで到達. 噴火警戒レベル5(避難)(check: 2015-05-29)
- 2014年
- 2014-08-??: 噴火.要調査.
御嶽
最高標高: 3067 m, Google Map へのリンク 御嶽山(気象庁web)
- 2014年
- 2014-09-27: 噴火 (1152 JST).噴煙高度: 最大10000 m (火口から7000 m). 長野レーダーによるエコー頂強度の解析より(火山噴火予知連絡会拡大幹事会, 2014-09-28).
- (大気汚染物質濃度への影響は未検証.ただし,噴出物の総量は少ないとされているので,常時監視局では拾えないかも)
西之島
「西ノ島」だと,隠岐諸島の島を指す.長らく間違えていたことに気づいてなかった(modified at 2015-07-03).
最高標高: 137 m, Google Map へのリンク,
西之島(気象庁web)
- 2013年
- 2013-11-20: 噴火.新しい陸地が出現.
- (大気汚染に関して言うと,近くに観測点がないため影響は不明.)
霧島山(新燃岳)
山頂標高: 1421 m, Google Map へのリンク, 霧島山(気象庁web)
気象庁の火山の状況に関する解説情報の発表状況 (霧島山(新燃岳))より抜粋.
- 「火山の状況に関する解説情報」の発表件数,年々減少. 2010年: 83回,2011年(H22): 138回,2012年: 103回,2013年: 53回,2014年: 0回,2015年: 5回.
- 噴火警報,噴火予報の発表状況(霧島山(新燃岳)), 気象庁.
- 2011年霧島山(新燃岳)噴火対応, 気象研・火山研究部web
- 霧島山(新燃岳)噴火関連情報(2011年1月~2013年11月)に噴火ごとの速報や月次報告などが掲載.
- 2011年
- 2011年での爆発的噴火は,1月: 3回,2月: 9回,3月: 1回 (霧島山の火山活動解説資料(平成23年10月)). 爆発的噴火がなくとも,噴石・降灰は周辺で観測される. 近隣の常時監視局でも,SPM濃度上昇がたびたび観測されている.
- 2011-01-26: 噴火警戒レベル3 (1800 JST), 中規模噴火(1530JST 以後),噴煙高度:約2000 m (火口縁上). See also Hashimoto et al. (2012, SOLA).
- 2011-01-27: 爆発的噴火(1541JST),噴煙高度:約2500 m.See 2011年第12号; See also Hashimoto et al. (2012, SOLA). Cバンドレーダにより噴煙エコー頂高度も観測された.
- 2011-02-01: 中規模な爆発的噴火(0754JST),噴煙高度:火口縁上約2000 m.噴煙は南東に流れる. See 霧島山(新燃岳)の火山活動資料(PDF; 2011-02-01 1830JST発表)
- 2011年6月: 16, 23, 29日に噴火.噴火は18Apr以来. See 霧島山の火山活動解説資料(平成23年6月)
桜島
山頂標高: 1040 m, Google Map へのリンク, 桜島(気象庁web), 気象庁・桜島 有史以降の火山活動, 桜島の月別噴火回数 (鹿児島地方気象台)
桜島火山2008-2009年昭和火口噴火 (by A. Tomiya, 産総研; 2009-07-21 改訂)
を参照(checked at 2015-07-03).
途中までは書き写していたが,途中から面倒になったので,かいつまんだ情報で記載.
火山屋さんでもない私がざっと見るには必要十分な情報だった.good.
1914年(大正3年)の噴火により,大隅半島とつながった.
- 2008年
- 2008-02-03 (2008年第1期): 噴火(0039 JST),爆発的噴火(1018, 1554 JST).噴火警戒レベルが3に引き上げ.
- 2008-02-06: 爆発的噴火(1033 JST),爆発的噴火(1125 JST).後者では噴煙高度 1000 m 以上,火口から 3 km 地点で,径3 - 5 mmの火山礫が降下.
- 2008-04-03 to 04-14: (2008年第2期) 爆発的噴火多数.詳細は上記ページ参照.
- 2008-05-07 to 06-28: (2008年第3期) 爆発的噴火多数.05-08 の噴火では,噴煙高度2800 m.詳細は上記ページ参照.
- 2008-07-28, 08-10, 09-07: (2008年第4期) 07-28 (0705 JST) の噴火では,噴煙高度 3300 m.その後は散発的噴火のようだ.
- 2009年
- 2009-02-01 to 02-04: 爆発的噴火,多数.
- 2009-04-09: 爆発的噴火(1531 JST).噴煙高度 4000 m以上, 火砕流が 1 km 流下 (昭和火口,山頂から東側,標高 800 m 付近).
- 2009-05-30: 爆発的噴火(2023 JST),噴煙高度:約2500 m
- 2009-06-10: 爆発的噴火(0724 JST),噴煙高度:約1500 m
- 2009-06-17: 爆発的噴火(1706 JST),噴煙高度:約2500 m
- 2009-06-24 to 07-19: 爆発的噴火,多数.上記webの記載では,合計47回の爆発的噴火を記録.
- 2010年以後
- 2009年以後から,活発な火山活動が継続.年間噴火回数は,少なくて656回(2014年),多い年には1355回(2011年)に達する (桜島の月別噴火回数 (鹿児島地方気象台)より抜粋; 2016-04-25 閲覧).
三宅島
山頂標高: 815 m, Google Map へのリンク; 三宅島(気象庁web)
- 三宅島火山ガス(SO2)放出量: 最近(H26-27頃)の放出量は 200-400 ton/day 程度. 観測は1-2ヵ月に一度,4-5回程度の測定値の平均.期間 = 2000-08-26 to current (checked 2015-10-10)
- 近年(2005年以後)の噴火日時の記録: 2005年以降の噴火記録
- 2000年8月以後の噴火・地震の詳細は,気象庁技術報告128号(気象庁,2006) を参照.電子媒体は見つけられず(checked 2016-05-09).
- 2000年(平成12年)
- 6/26から群発地震,6/27 に西方海上で海底噴火
- 7/8 雄山で水蒸気爆発,山頂付近で陥没火口(カルデラ)形成.噴煙高度約1500m(灰白色噴煙の高さは800m)
- 8/10 山頂陥没火口付近から噴火(断続的),噴煙高度約8000m, 黒色噴煙の高さは3000m以上(いずれも火口上からの高さ)
- 8/18 大規模噴火(17:02 JST頃),噴煙高度約14000m,黒灰色噴煙は8000m以上
- 8/28 関東地方で異臭騒ぎ.八王子市でSO2濃度(1時間値)が 0.935 ppmv を記録.
- 8/29 大規模噴火(04:30 JST頃),噴煙高度約8000m,灰白色噴煙の高さは 4000m 以上.火砕流発生
- 9/2 全島避難(2005年2月1日に解除)
- 9/17,横浜市にSO2の大気汚染注意報発令(30年ぶり).三宅島の噴煙影響. See 用語解説: 二酸化硫黄 (SO2)(横浜市・環境創造局)
- 火山灰を含む有色噴煙は9/28が最後(2000年地震火山月報12月号p.66)
- 白色噴煙(水蒸気が中心)は連続的に噴出,高さは火口上1000 - 2500m 程度
- 2005-02-01, 避難指示解除.ただし現在でも噴火活動は継続中.
- 関連文献: Kajino et al. (2004, JGR)
- 1983年(昭和58年)
- 10/3 15:23 雄山南西山腹からの割れ目噴火(溶岩噴泉).
- 同日 16:40 前後,マグマ水蒸気爆発.
- 気象庁 web ページを見る限りでは,噴煙に関する記載なし. この記載事項を見る限りでは, 溶岩流出とマグマ水蒸気爆発がメインである. 鉛直方向の情報(例えば噴煙到達高度)は現時点で確認できず.
- 過去の噴火情報: See 三宅島噴火の歴史
(気象庁・三宅島火山防災連絡事務所; 1085年以後の記録)
- 詳細情報が掲載されているのは,1940年(昭和15年), 1962年(昭和37年),1983年,2000年
- 近年の記録: 2005年以降の噴火記録
参考文献・リンク
SO2高濃度に関する文献などの情報. Under construction.
文献 (学術論文)
- 篠原 (2015, 大気環境学会誌, Vol. 50, No.5, A59-).
- title = 火山噴火と大気環境 —第2講 火山ガスの放出量と組成の測定
- Wakamatsu et al.(2013, Asian J. Atmos. Env.)
- title = Air Pollution Trends in Japan between 1970 and 2012 and Impact of Urban Air Pollution Countermeasures
- 日本国内の常時監視局データの長期的な傾向(SO2 は Figs. 2, 8).
- Fig. 8: 東京での SO2 98パーセンタイル値が,様々な排出抑制対策により逓減.
web
- 用語解説: 二酸化硫黄 (SO2)
(横浜市・環境創造局)
- 一般知識の解説から,近年の濃度(1960年代以後),環境基準,人体への影響などを掲載.
更新履歴
更新日 | 内容 |
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2015-05-09 | 霧島や三宅島関連の情報追加. web情報も. |
2015-10-10 | 三宅島関連の気象庁情報を追記. リンク用のIDをrenumber してページ構成を変更. |
2013-XX-XX | 正確な記録開始日は不明.それほど古くから記載してないはず. |