CTM メモ
化学反応・輸送モデル(CTM)に関する研究メモ(作成開始: 2016-01-16).
CTM の概要
その名の通り,大気中の様々な要素の化学反応に関する数値計算モジュール(群). 極めて多くの化学反応式をモジュール内に持ち, 大気汚染物質の気相・液相・固相の変化や水蒸気の凝結・降水過程に伴う rain-out & wash-out なども計算.
温度,湿度や放射量などに依存する化学反応も多く,かつそれが大気の運動に従って輸送されるため, 気象モデルと深い連携関係にあるのが一般的である.
CTM 関連ツール,データ
気象モデル
領域モデルなら WRF, RAMS, JMA-NHM (asuca), SCALE-RM あたりを想定.
必ずしもCTMに使える or 対応できるものに限定せず,領域気象モデルとして使える可能性があるものを列挙.
The Weather Research and Forecasting (WRF)
- WRF web (UCAR)
- See WRF ARW User's page
- See also 早崎によるWRFセットアップメモ = WRFセットアップ (hysk)
- See also 早崎によるWRF実行に関するメモ = WRFメモ (hysk)
- See also NCEP FNL メモ (hysk): 入力に使える気象データセットの一つとして,NCEP FNL がある. 使う前に,せめて一読しておけ.
Regional Atmospheric Modeling System (RAMS)
- RAMS model (Colorado State Univ.)
- 昔(1990年代頃?)は RAMS と MM5 が領域モデルの二大勢力,という印象. 最近(2000年代なかば以後くらい?)は WRF ユーザが圧倒的に多い印象.
- 最新 v6.3.01 (release: 2020-12-01; chk 2021-06-21)
JMA-NHM (気象庁非静力学モデル), asuca
- 数値予報研究開発プラットフォーム (気象庁, 日本)
- 日本国内の気象モデル開発者(気象庁,気象関連研究者)の交流の場.気象庁の非静力学モデル(Non-Hydro Model; NHM)の開発・使用者向け
- See 数値予報課報告・別冊第60号「次世代非静力学モデル asuca」(PDF); 第60号(FY2013)〜66号(FY2019)までは気象庁webで公開. 第67号(令和2年度;FY2020)からは,数値予報開発センター年報に記載.
- JMA-NHM は2004年度から現業導入,asuca は2015年(LFM),2017年(MSM)で導入(参照: 別冊66号序文)
- 利用にはユーザ登録が必要.フリーで使えないためか,あまり更新されていないように見える. 数値モデル研究会の開催情報が更新されてるくらいか.
Scalable Computing for Advanced Library and Environment (SCALE) Regional Model
- SCALE web (理化学研究所, 日本)
- See SCALE-RM page
- 数値気象モデルの基盤ライブラリー.領域モデル版が SCALE-RM で全球モデル版が SCALE-GM
- 最新 v5.4.3 (release: 2020-12-01; chk 2021-06-21)
化学反応モジュール
Under const.
とりあえず CMAQ について.気象モデルと結合してるケース(WRF-Chem とか)もここに記載.
GEOS-Chem も入れておくか.後で.
SAPRC, Carbon Bond 4 and/or 05 (CB4, CB05) などなど. 主に自分自身が使う・参考文献で使われているから基本情報くらいは知っておきたい, などの背景が有るモノだけを記述.
まだ情報集め始めて間がない. まとめてから書こうとしても時間がかかるので,断片的な情報でも取り敢えず記述(2018-11-21)
SAPRC
- SAPRC web
- SAPRC = the Statewide Air Pollution Research Center の略. Univ. California, Riverside 付属の研究センターが出発点らしい. Carter (1988) のIntro部分に書いてあった
- 気相反応メカニズムの集合体.CMAQ などのCTM で使われている. 現時点では Fortran で書かれている. CTM 業界(主に CMAQ 関連)で特に有名なのは,SAPRC-99, SAPRC-07 あたりか.
- 「さぷらっく」と発音する人が (日本人では)多数派の模様. 開発者ないし英語ネイティブな人たちの発音は,聞いたことがないので不明.
- 現行版は SAPRC-11 らしい. See Carter and Heo (2013, Atmos. Env.). 自分が利用する CMAQ v5.2.1 では,SAPRC-07 を使用 (2018-11-21). SAPRC-16 というのも作られているようだが...
- 非常に多数の有名論文あるが,取得するなら Carter さんのwebサイト内, Downloadable Documents by William P.L. Carter から始めると良い. 特に重要な論文は,一つ上位のトップページに "Selected publications and reports" としてまとめられている.
- 取り敢えず一つ論文をあげるとすれば,SAPRC-07 の記述論文 Carter (2010, Atmos. Env.) となる. 比較的近年の論文であり,ここから過去文献を辿るのは簡単. また,現行のCMAQでよく利用される SAPRC07 なので,現在(chk 2018-11-21)でもほぼ通用する内容.
Carbon Bond (CB)
- CB4, CB05
- 炭素の結合の仕方(単結合,二重結合,三重結合,など)により反応性が異なることを考え方の基礎に置いた反応メカニズム,のはず
- (あとで論文読んでおけ...)
ISORROPIA
- ISORROPIA II
- 無機成分エアロゾルの反応過程の数値モデル.熱力学平衡に基づくモデル.
- 記述論文: Fountoukis and Nenes (2007, Atmos. Chem. Phys.); DOI: 10.5194/acp-7-4639-2007
- 主な対象成分は NH4+, NO3-, SO42- あたり.考慮している要素ではさらに K+, Ca2+, Mg2+, Na+, Cl- まで.
- 初期版 ISORRPIA (v1.0) は1997年にリリース.現行版 ISORROPIA II (v2.1)は2009年リリース (ユーザーズガイド Introductionより).
- 記述言語: 大部分は Fortran 77
- 古い情報は旧ISORROPIA web (ISORROPIA Aerosol Thermodynamic Model; 2012年以後は更新なし)が見つけやすいかもしれない.
- 無機成分エアロゾルの反応過程の数値モデル.熱力学平衡に基づくモデル.
- 発音は日本人だと「いそろぴあ」or「あいそろぴあ」あたりか.ネイティブの発音を確認できてないけど,たぶん「あいそろぴあ」の方だと推測.
排出インベントリ (Emission inventory; EI)
排出インベントリ(Emission inventory; 以下EIと表記) の情報. 全球EI,領域EIを区別せず. ひとまずは,思いついた順に記載開始(2016-01-16).
Regional Emission inventory in ASia (REAS)
- REAS web
- アジア域の排出インベントリ.最新は ver. 3.2 (chk 2021-04-07; release at 2020-10-29)
- period: 1950-2015 monthly (v2 系 2001 - 2008 monthly)
- resolution: 0.25 deg. x 0.25 deg.
- Species: SO2, NOx, CO, NMVOC, PM10, PM2.5, BC, OC, NH3, and CO2 (v2 Species: SO2, NOx, CO, NMVOC, PM10, PM2.5, BC, OC, NH3, CH4, N2O, and CO2)
- v3系: See Kurokawa and Ohara (2020, Atmos. Chem. Phys.)
- v2系: See Kurokawa et al. (2013, Atmos. Chem. Phys.) これ以前のバージョン(REAS v1.11) の記述論文 Ohara et al. (2007, Atmos. Chem. Phys.)も要参照.
- 概要(v2時点)を知りたいなら,和文での総説黒川 (2014, 大気環境学会誌)を読むこと.
AeroCom
- AEROCOM-II HCA0 v2
- 火山起源排出インベントリ.ver. 2 (checked 2016-05-08)
- period: [ACCMIP] 1850-2100 (decadal monthly); [AeroCom-II] 1979 - 2006 (yearly)
- resolution: [ACCMIP] 0.5 deg. x 0.5deg. ([AeroCom-II HCA0 v1/v2]: 1.0 deg. x 1.0 deg.)
- Species: BC, OC, SO2 (AeroCom-II HCA0v1/v2)
- 全球エアロゾルモデル相互比較実験 (AeroCom)の共通インベントリとして使用された.
- データ解説論文: Diehl et al. (2012, Atmos. Chem. Phys. Discuss.). ただし,revised manuscript は reject されたらしい("Review status" 参照)ので,引用するならこれになるようだ.
- 関連文献: 梶野・田中(2016, 大気環境学会誌, vol. 51 No. 1, A1-A9; 未電子化. checked 2016-05-08)
- バージョン1 データはこっち: AEROCOM-II HCA0 v1
CAMS Global Fire Assimilation System (GFAS)
- CAMS Global Fire Assimilation System (GFAS)
- 森林火災などによる日々の排出量データ.最新は ver. 1.2 (checked 2017-06-21)
- period: 2003 - current (daily mean)
- resolution: 0.1 deg. x 0.1 deg. (3600 x 1800 grids)
- Species: BC, OC, SO2, 多数の炭化水素類,injection height, .... とにかくたくさん.
- どうやら Meteosat (MSG) の SEVIRI や Terra or Aqua/MODIS の hotspot 情報から推計しているらしい. 赤外 or 近赤外バンドの観測だろうから,上空に雲があったら見えないよな? 詳細は未チェック.
- データ解説論文: (あとで調べる)
- ざっくりした情報を知りたいなら,
FIR Global Fire Monitoring
を読むと良い.
- 最新(1 or 2日遅れくらい?)の森林火災分布(Fire radiative power; unit = mW/m^2)を画像で見る事ができる
Global Fire Emissions Database (GFED)
- Global Fire Emissions Database (GFED)
- 森林火災などによる日々の排出量データ.最新は ver. 4 (checked 2018-11-12)
- period: 1997 - 2016 (monthly, daily, 3-hourly)
- resolution: 0.25 deg. x 0.25 deg. (1440 x 720 grids)
- GFED4 と小規模燃焼(small fires)も考慮した GFED4s がある.
- 提供データ要素: burned area, 燃焼タイプ別 burned area & emission
- HDF5形式のファイル.monthly データの場合,carbon emission (unit: gC m^-2 month^-1) とdry matter emission (kg DM m^-2 month^-1)がある
- 上記の燃焼タイプは6区分:
- Savanna, grassland, and shrubland fires (サバンナ,草地,低木地での燃焼.おそらくは半乾燥域等での背の低い草木の燃焼)
- Boreal forest fires (北方林,日本の近くだとシベリアの森林火災を考えれば良かろう)
- Temperate forest fires (温帯林の燃焼)
- Deforestation and degradation (森林破壊,つまり伐採やその後の後始末時の燃焼のことか? ここは自信がない)
- Peatland fires (泥炭地での燃焼)
- agricultural waste burning (農作物残渣の燃焼;いわゆる野焼き)
- データ解説論文: Giglio et al. (2013, JGR Biogeosci.). GFED4 の解説論文,w/o small fires 版のもの (GFED4s ではないことに注意).
- 空間分布,時系列などの図が必要なら,
GFED > Figures
を参照.
- 全球の空間分布(1997-2014の年平均),地域別の燃焼タイプ別積み上げ棒グラフなど
National emission (EU諸国の国別排出量)
- National emissions reported to the Convention on Long-range Transboundary Air Pollution (LRTAP)
- EU諸国の国別排出量.配布元はEuropean Environment Agency (EEA).年間値,成分ごとに排出セクタ区分されてる.2017年まで更新 (checked 2019-08-25).
- period: 1990 - 2017 (annual)
- resolution: individual countires, EU諸国
- データそれ自身の配布もしているが,面白いのは地図 & 排出量の時系列(排出セクタ別の積み上げ棒グラフ)表示がある事. Air pollutant emissions data viewer (LRTAP Convention) 表示成分や排出セクタをプルダウンメニューから選べるので, quick-view として使うのに適している.
- グリッドデータではなさそうなので,大気質モデルにそのまま利用することは困難. 数値モデルに関与する研究者向きのデータとは言えないが,大学の一般教養レベルの講義資料とか行政関係者等への説明には使いやすそう.
温室効果ガスインベントリ (国環研,GIO)
- 温室効果ガスインベントリ
- 国立環境研究所,温室効果ガスインベントリオフィス (GIO) がまとめた日本や諸外国の情報.
- (その他情報,調べてから...)
初期条件・境界条件 (initial/boundary condition(s))
領域モデルだと,初期条件・境界条件のデータが必要になる(2022-05-18). 使用者が好きに選べば良いのだが,誰でも利用できるものを選択.
CAM-Chem
- CAM-Chem outputs as boundary conditions (RDA ds313.7)
- 全球CTMのCAM-Chemを使った全球大気化学成分データ.CAM-Chem はCESM2.1 をベース (chk 2022-05-18)
- DOI: 10.5065/CKR4-GP38
- period: 2001-2020 6-hrly (netCDF形式.ファイルは daily; 4.9 GB/(1-day file))
- 気象場はMERRA2で駆動.ファイル名がとても長い.ex. fmerra.2.1003.FCSD.f09.qfedcmip.56L.001.branch02.cam.h1.2019-05-01-21600.nc
ボックスモデル・0次元モデル
ボックスモデル本体
- AtChem
- See Sommariva et al. (2020, GMD)
- 反応過程はMCM使用
ボックスモデル関連モジュール・化学反応過程
- Master Chemical Mechanism (MCM)
- Current ver. = v3.3.1 (chk 2021-10-11)
- MCM original paper: Roots of MCM = See Jenkin et al. (1997, Atmos. Env.)
- See also Jenkin et al. (2002, Atmos. Env.), Jenkin et al. (2003, Atmos. Env.), Jenkin et al. (2015, Atmos. Chem. Phys.), Jenkin et al. (2019, Atmos. Env.),
リンク
CTM, EIに関連する文献リスト.
文献
- Kurokawa and Ohara (2020, Atmos. Chem. Phys.):
- title = Long-term historical trends in air pollutant emissions in Asia: Regional Emission inventory in ASia (REAS) version 3
- REAS v3.2 description paper
- REAS Download site = https://www.nies.go.jp/REAS/; latest ver = REASv3.2 (2020-10-29 release)
- 黒川 (2014, 大気環境学会誌):
- title = アジアにおける排出インベントリに関する研究
- 平成25年度大気環境学会進歩賞受賞に伴い総説記事.この時点で最新の REAS v2.1 をメインにして解説されている.
- Kurokawa et al. (2013, Atmos. Chem. Phys.):
- title = Emissions of air pollutants and greenhouse gases over Asian regions during 2000–2008: Regional Emission inventory in ASia (REAS) version 2
- REAS v2.1
-
Carmichael et al. (2008, Atmos. Env.):
- title = MICS-Asia II: The model intercomparison study for Asia Phase II methodology and overview of findings
- MICS-Asia II: The model intercomparison study for Asia phase II; 詳細は Editorial comments を参照
- Special issue of MICS-Asia II; つまり MICS-Asia II 特集号.Atmos. Env. vol. 42, issues 15, May 2008, p. 3465-3592, 全8本の論文.
- MICS-Asia II 実施期間: Mar, Jul, Dec 2001, Mar 2002
-
Ohara et al. (2007, Atmos. Chem. Phys.):
- title = An Asian emission inventory of anthropogenic emission sources for the period 1980–2020
- REAS v1.11
更新履歴
更新日 | 内容 |
---|---|
2022-05-18 | 初期条件・境界条件データ(ex. CAM-Chem)の情報を追記 |
2021-10-11 | ボックスモデル関連(MCMとか)の情報を追記 |
2021-04-07 | REASv3, CMAQ 内部のモジュール関連の情報を追記 |
2019-08-25 | 排出インベントリ関連の細々とした情報を追記. |
2018-11-21 | 気相反応メカニズム SAPRC 関連情報を追加.Carter さんのweb, 文字ばかりだけど(私にとっては)使いやすい. シンプルな構成なので情報見つけやすい点が good. 非常に好感持てる. |
2018-11-12 | GFED情報を追加. |
2017-06-21 | NICAM-Chem (NICAM-SPRINTARS) に関する研究に従事するようになったので,作業用メモを兼ねて更新再開. 森林火災によるエミッションとして CAMS Global Fire Assimilation System (GFAS) のメモを追加. |
2018-02-06 | 文献情報を追加.MICS-Asia II の特集号とか. |
2017-06-21 | NICAM-Chem (NICAM-SPRINTARS) に関する研究に従事するようになったので,作業用メモを兼ねて更新再開. 森林火災によるエミッションとして CAMS Global Fire Assimilation System (GFAS) のメモを追加. |
2016-05-08 | AEROCOM-II HCA0 v2 関連の記述を追加. |
2016-01-16 | 記述開始. これまで断片的に得ていた知識・情報が錯綜して,わけが分からなくなりつつあった. 自分の脳内整理のために開設. とりあえず,記述予定の見出しの列挙 & エミッションインベントリ(REAS v2.1)について記載. |