現業客観解析データ情報
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定義
世界各国の気象予報センターなどが, 日々の天気予報のために作成・使用している格子点気象データ. 一般的に,再解析に比べて新しいバージョンの数値予報モデルを用いる場合が多い.
最新の同化手法やモデルなどを利用するだけでなく, 同化する観測データの種類・量も多い... 事が期待されるのだが, 必ずしもそうではない. 観測データの配信遅延などが生じれば,予報モデルのデータ同化サイクルに データ入力が間に合わない事もある(だろう). 私はそういった「現場の人」じゃないので,実際の運用時に どのくらいの頻度でデータ入力の欠落が生じるのかは知らない.
再解析データとのもっとも大きな違いは, 使用している数値予報モデルがたびたびマイナーチェンジされている点. 使用目的が天気予報精度向上のためなのだから, より良いものに差し替えていくのは至極当然. しかし,モデルの内部処理変更に伴う計算結果の違いが存在するので, 長期気候変動の解析には不向き.
- 参考: 長期再解析データ (hysk)
- 参考: 将来予測データ (hysk)
現業データの例
ECMWF forecasts
- ECMWFは, ヨーロッパ全体の中期気象予報を目指して運営されている, 国際的気象予報機関.
- ここでいう「中期 (medium range)」とは,10日程度以上の意
- ECMWF による予報結果は Web で閲覧可能. ヨーロッパだけでなく, アジア・南北アメリカ・アフリカ・オーストラリアなど, (実生活の上では)ほぼ全世界の予報結果も閲覧可能
- 予報に使用した
観測値 (地上・船舶,高層ゾンデ,ウインドプロファイラ,衛星リモセン観測など)の 地理的分布
を,準リアルタイムで公開http://www.ecmwf.int/en/forecasts/charts/monitoring/dcover
Checked 2016-01-23: このページは ECMWF トップページからだと,少々見つけにくい(以前よりマシ). トップページからのアクセス経路は以下の通り: "Forecasts" -> "Charts" を選択,ページ下部の項目名: Monitoring of the observing system 部分にある. 陸上の地上観測だけでなく,高層ゾンデ(Temp),航空機,海洋ブイや衛星データの coverage も選択可能(画像上部の "Obs" ボタンから).
- 私が知る限り,他の気象予報機関では類似の情報は提供されていない. ECMWFが唯一と思われる
- 数値天気予報に必要な入力データが非常に多岐にわたること. また,その地理的分布は, データ(というか観測手法)によって,空間的な密度および一様性が大きく異なる事, などが一目瞭然.
-
一般受けしない情報だが,
気象研究者(& 予備軍たる学生に)は,
非常に良質かつ重要
なページ. 客観解析データを使う人・数値モデルを使う人は見ておくべき. というより,一度くらい見なさい! これは義務です(私見).
日本の気象庁も提供してほしいものだ
NCEP Global Tropospheric final analysis (NCEP FNL または NCEP GDAS1)
- US NCEP/NOAA による数値予報データ
- 水平格子間隔 = 1.0 x 1.0 degree (lat/lon), 鉛直26層 (1000 - 10 hPa) の気圧面データが入手可能 (ユーザ登録 & パスワード認証必要)
- 水平格子間隔 = 0.25 x 0.25 degree (lat/lon)版,00Z 08Jul2015 から提供開始(checked 2015-11-05)
- 1.0度間隔版の実質的な利用可能期間は,2000年1月以後 (1999-07-30T18:00+0000以後から存在するが, 1999年は時間的な欠落が非常に多い. Dec1999 も,18UTC 06 & 07; 06 & 18UTC 08 Dec の4個が欠落. 冬季(DJF)の解析に使えないのが残念...
- 詳細は NCEP 現業NWP メモ参照
- DOI: 10.5065/D6M043C6 (CISL RDA の ds083.2 へのリンクに相当.checked 2015-01-23)
- データを使用した場合の引用スタイルの例がある.ディジタルデータの引用スタイルを知るのに役立つ.
- FNL と GFS の違いは,同化するデータの量のみ.データ同化システムや予報モデルは同一である. GFS は実際の天気予報業務に使われているため,数値予報のデータ同化サイクルに入信が間に合わない観測データが存在する. FNL は,それら GFS の予報には間に合わなかった観測データも使った,hindcast の一種とも言える. FNL では,GFSと較べてデータ同化に使用する観測データが約10%増える (See Difference between FNL and GFS).
NCEP Global Forecast System (GFS)
- initialize 6-hourly, 0.25 degree interval (T1534 (0-240 hr fcst) & T574L64 (240-384 hr fcst); 15 levels are below 800 hPa & 24 levels are above 100 hPa), GRIB2 format
- 詳細はNCEP GFS 本家のページを参照. 特にDocumentationは重要. 早崎による抜粋メモは,NCEP 現業NWP メモ参照.
- NCEP GFS データの配布サイトなどの情報は, ここを参照
- 利用可能な等圧面: 1000 (ip=1), 975, 950, 925, 900 (ip=5), 850, 800, 750, 700, 650 (ip=10), 600, 550, 500, 450, 400 (ip=15), 350, 300, 250, 200, 150 (ip=20), 100, 70, 50, 30, 20 (ip=26), 10 hPa
- オゾン混合比が 400hPa 以上の上層,10hPaまでが利用可能.ただし,厳密なオゾン生成・消失を モデル内で計算しておらず,経験値(平年値)を与えているだけらしい (see "Chemistry" section in Model documentation page)
- (2020-12-24) GFS のモデル概要(更新した点)などは,一部がWebで閲覧可能.
- GFS v15.1 (12UTC 12Jun2019 以後)
- GFS Global Spectral Model (GSM) v13.0.2 (May2016時点): 10-day 予報(T1534, L64; 水平13km), 10〜16-day 予報 (T574 L64; 水平34km),
JMA GPV
- Japan Meteorological Agency Grid Point Value の略
- 詳細は JMA GPV メモ 参照
- 気象業務支援センターが販売. ただし,データが水平・鉛直方向ともに間引かれており, 現代の研究で使うにはあまりにも力不足. カネを払って買う気になれない
- 気象研究コンソーシアム経由で利用申請すれば, モデル面データなどの利用が可能. 受信データは1日4回,約6GB/day になる (予報値も含むので,ちょいとファイルサイズでかい. 1年で約2TBになるので,自動受信するには保存場所の空き容量に注意)
TIGGE
- TIGGE: THORPEX Interactive Grand Global Ensemble の略
- 世界中の天気予報に関わる機関が,それぞれの天気予報(数値予報の結果)を提供,全世界に公開(Oct2006以後). アンサンブル予報のそれぞれのメンバーの予報結果もあるため,データ量は莫大.
- メインターゲットは,2週間先の high-impact weather 予報の精度向上.
- See TIGGE Home
Sub-seasonal to Seasonal Prediction Project (S2S)
- S2S Project: Sub-seasonal to Seasonal Prediction Project
- 季節予報アンサンブルメンバーのデータ集積. TIGGE が2週間先までの中期予報の精度向上を目指していたのに対し,S2S は季節予報をターゲットとしている. 世界中の天気予報に関わる機関(10機関中7機関のデータ利用可能; checked 2015-11-05)が,それぞれの季節予報(数値予報の結果)を提供,全世界に公開. アンサンブル予報のそれぞれのメンバーの予報結果もあるため,データ量は莫大.
- 季節予報なので,大気海洋相互作用が重要になる.従って,多くのモデルは大気海洋結合モデル(CGCM). ただし,気象庁はAGCM (TL319L60 (top=0.1hPa), 34-day fcst, 48-member ensemble) のようだ.
- 2015年秋季気象学会@京都テルサ にて,中澤さんが紹介していた(講演番号B301)
- 予報値を取得可能な参加モデルのリスト: BoM, CMA, ECMWF, HMCR, JMA, Meteo France, NCEP
- BoM: Bureau of Meteorology, Australia; CMA (中国? カナダ気象局だと思いこんでた), HMCR (ロシア?), ... (under const.)
- ISAC-CNR, KMA, UKMO はデータ待ちか? (checked 2015-11-05)
- S2S の Data Portal は2ヶ所: ECMWF & CMA (カナダ気象局; 未整備? checked 2015-11-05)
- See S2S Project Home
- See also S2S Meteo France Contribution (PDF)
各データセットのスペックと収録期間
私が知る範囲で,現業データのスペック(水平格子間隔,鉛直層数,時間間隔)や 関連する覚え書きを記す.
dataset name | period | grid interval | vertical levela | temporal interval | memo |
---|---|---|---|---|---|
NCEP FNL (GRIB-1) | 00Z 01Jan2000 - 06Z 06Dec2007 | 1.0 degree | 26-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
NCEP FNL (GRIB-2) | 12Z 06Dec2007 - current | 1.0 degree | 26-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
NCEP GDAS/FNL (GRIB-2) | 00Z 08Jul2015 - current | 0.25 degree | 26-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
NCEP GDAS1 | 00Z 01Dec2004 - current | 1.0 degree | 23-level (1000 - 20hPa) | 3-hrly (forecast) | Global, missing data exist in 2005 |
NCEP GFS | ??? - current (GRIB2) | 0.5 degree (T574L64) | 26-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
NCEP GFS | 15Jan2015 - current (GRIB2) | 0.25 degree (T1534L64, top=0.3hPa) | 26-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
JMA GPV GSM (GRIB-2) | 00Z21Nov2007 - current | 0.5 degree (sfc - 100 hPa) 1.0 degree (100 - 10 hPa) |
17-level (1000 - 10hPa) | 6-hrly | Global |
JMA GPV MSM (GRIB-2; p-level) | 00Z01Mar2006 - current | 0.125 x 0.1 degree | 16-level (1000 - 100hPa) | 3-hrly | Japan area (120-150E, 22.4 - 47.6N) |
JMA GPV MSM (GRIB-2; surface) | 00Z01Mar2006 - current | 0.0625 x 0.05 degree | surface or column data only | 1-hrly (forecast) | Japan area (120-150E, 22.4 - 47.6N) |
- 上記期間は,早崎が所有するデータ保管の期間(NCEP GFSを除く). 配信元が提供する全期間とは必ずしも一致しないので注意 (例: NCEP FNL は18Z 30Jul1999 より存在するが,1999年はデータ欠落が多く, 時間的に連続する解析に不向き.2000年以後は欠落ナシ)
- GRIB-2 データの取扱い・読み出し方法は, GRIB-2 ファイルの dumpを参照
更新履歴
Date | Changes |
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2020-12-24 | NCEP FNL (GFS) 関連の情報追記,一部のリンク切れを張り直し. 執筆時で少々古くなったバージョンのWRF (v3.8.1; 最新v4.2.1)を実行しようとして metgrid で失敗した原因を探していて,FNL (GFS) のモデル更新などの情報を取得,忘れないうちに追記.metgrid での実行失敗は,WRF/WPS v4系列から ungrib.exe を丸ごとコピーして再実行することで解決.Vtable の差替も忘れずに. |
2016-01-23 | ECMWF の観測データ閲覧アドレスのリンク切れを修正.
これは気象予報への観測データの重要性を知るための極めて重要な情報の一つ.
リンク切れを放置するわけにはいかない.
数値モデルを取り扱う学生には,必ず見せてあげてください > 大学の先生やってる方々 |
2015-11-05 | S2S 情報を追加.秋の気象学会@京都で聞いたネタ by 中澤さん |
2011-06-24 | 早崎web@富山大の最終更新日.この頃は,ECMWF, NCEP FNL, JMA GPV しか記述してない. |
2009-XX-XX | 初版作成日は不明.おそらく,千葉大CEReS在職中に現在のページの原型が書かれたと思う. だとしたらこのくらいの時期. |